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あしたも晴れる 3話 「快晴少女(アスタラビスタ)」

原作:春ト

この台本の
著作権は作者にあります。
著作権は放棄してません。

キャラクター紹介(イラストあり)
http://ch.nicovideo.jp/3nen8kumi/blomaga/ar456286


《配役》

天上明日香♀(てんじょうあすか)17歳【ワード数:118】
矢島昇♂(やじまのぼる)17歳【ワード数:63】
天上翔♂(てんじょうかける)26歳【ワード数:69】
森の神様♀見た目10歳の妖精:あだ名は『ミクちゃん』【ワード数:54】
織姫♀(おりひめ)24歳【ワード数:35】
謎の女性♀ 20代半【ワード数:4】




総ワード数:342





性別比率
♂2:♀4



サブタイトル「快晴少女(アスタラビスタ)」



天気:曇

天気:曇



(夜の境内の前)


1    昇     「せっかくの祭りだっていうのに、曇ってるな」

2    ミク    「降水確率80パーセントって天気予報で言ってたわよ」

3    昇     「うわっ、ぜってー雨、降ってくるじゃん」

4    ミク    「雨の祭りも、楽しいわよ~」

5    昇     「いや、楽しくねーよ」

6    明日香   「昇、ミクちゃん、お待たせー」

7    昇     「来るのおせーぞ、明日香…」
 
8    明日香   「へへ~ん、どう? 新しい浴衣、似合う?」

9    昇     「あ、ああ。似合うんじゃないか。スゲー、かわいいよ」

10   明日香   「ホントに!?」

11   明日香M  「ああ、可愛いって言われて、なんか恥ずかし~」

12   昇     「浴衣だけ、かわいいよな~」

13   明日香   「なによそれ~。私には、何か言ってくれないの? 
            お祭りのために、髪を結ったんだよ」

14   昇     「あ? ああ、いいんじゃないか」

15   明日香   「どのへんが?」

16   昇     「さ、早くいこうぜ~」

17   明日香   「ちょっと、待ってよ、昇」

18   ミク    「ふっ、昇、照れてるわね」

19   明日香   「え? そうなの?」

20   ミク    「小娘が、普段と違う姿に、どうしたらいいのか、困ってるのよ」

21   明日香   「え? それってもしかして…」

22   ミク    「さて、祭りを楽しも~と」

23   明日香   「ちょっと待ってよミクちゃん。おいてかないで~」


(夜の境内)


24   明日香M  「この前、雪さんが言ってたけど、攻めたほうが、
            幸せにもなれるし、本物の女性にもなれるらしい。
            けど、昇に攻めるっていっても、
            私は、別に昇のコトを好きだとは思ってない。
            でも、改めて見てみると、かっこよくはなってるし、
            野球部を休むほど、私のお兄ちゃんを一生懸命守ってるし、
            お店の接客だって、私より全然うまいし、私を守ってくれたし、
            なんか、目が離せない存在にはなってるけど、
            これが、恋愛感情なのかな~
            朝から晩まで、昇のことを考えてるような気がするな~」

25   ミク    「じゃあ、なんで浴衣着て、髪の毛も結ったのよ」

26   明日香   「って、ミクちゃん!? ま~た人の心、読んだでしょ?」

27   ミク    「小娘が、じれったいから、神である、あたしが助けてあげる。
            で、なんで、そんなにも着飾ったのよ」

28   明日香   「それは…お祭りだから…」

29   ミク    「あたしに、隠し事はできないわよ。
            本心を喋りなさいよ。       
            ホントは、昇のためにやったんでしょ?」

30   明日香   「!? 確かに、そうかもしれないけど…
            じゃあ、どうすればいいの?」

31   ミク    「昇の手でも握れば?」

32   明日香   「そんなこと言ったって、心の準備ってものがあるよ」

33   ミク    「心の準備って、言ったってね。知らない仲じゃないでしょ?
            あんたは、何年前から昇と知り合いだと思ってるの?」

34   明日香   「それは、幼稚園から、ずーっと一緒だったよ」

35   ミク    「ちょっとは、この関係を変えたいと思わないの?」

36   明日香   「だって、昇だよ?」

37   ミク    「心にウソをつくのだけは、やめなさいよね」

38   明日香M  「ウソって…私は、昇を気になってはいるけど、
            これが好き、って気持ちなのかは、わからない。
            っていうか、昇はどうおもってるんだろう。
            今、一緒にお祭りに来てるけど、楽しいと思ってるのかな?」

39   ミク    「小娘は、楽しくないの?」

40   明日香   「そりゃ、楽しいよ。
            って!? また、心を読んで」

41   ミク    「変化する時なのよ。大人の仲間入りも、間近ね」

42   明日香   「大人って、そんな、私は、まだ…」

43   昇     「なに2人で話してんだ?」

44   明日香   「うんん、なんでもない」

45   昇     「あん?」

46   ミク    「けっ、臆病者がっ」

47   明日香M  「ミクちゃんの言う通り、私は臆病者。
            どうしていいか、わからないし、
            もし、失敗したら、この関係が壊れそうで、大きな1歩が踏み出せない」

48   昇     「まあ、いいか。それにしても、結構、人がいるな」

49   明日香   「それは、そうでしょ。年に1度のお祭りなんだから。
            これってさ、神様を祝ってるのかな?」

50   ミク    「そりゃそうでしょ。島のお祭りなんだから、この御宮島(みぐうじま)の神様である、
            あたしのための祭りなのよ。あんたたち、おおいに盛り上げなさい」

51   昇     「盛り上げる以前に、俺たちは、大事な使命がある」

52   明日香   「そのとおり、今日まで、お兄ちゃんを守るってコト」

53   昇     「今日を無事に乗り越えればいいんだけど、
            明日香、翔兄は、どこにいるんだ?」
 
54   明日香   「え? 私は浴衣に着替えるから、先にお兄ちゃん行ってるって言ってたよ。
            たぶん、この境内のどっかに居るよ」

55   昇     「手遅れになる前に、合流しよう。明日香、翔兄に電話しろ」

56   明日香   「そうだね、どんな危険が待ってるかわからないから電話するよ」


(電話での会話)


57   翔     「はい、もしもし」

58   明日香   「お兄ちゃん、今、どこにいるの?」

59   翔     「お祭りだよ。家を出る前に言ったんだけどね」

60   明日香   「それは、わかってるけど、お兄ちゃんと合流しようかと思って」

61   翔     「昇もいるんだよね?」

62   明日香   「今、一緒にいるけど」

63   翔     「じゃあ、2人で楽しめばいいよ。
            僕がいると邪魔になっちゃうからね」

64   明日香   「そんなことないよ。私は、お兄ちゃんとも一緒に、お祭りを楽しみたいよ」

65   翔     「明日香、いつまでも僕と一緒には居られない。
            いつかは、特別な人と過ごすんだ」

66   明日香   「なにいってるの…?」

67   翔     「はあ~…どうして、電話なんかに出たんだろう?
            うんん…あ~、そうか、最後に話したかったのかもしれないね…」

68   明日香   「あの、お兄ちゃん、それってどういう意味?」

69   翔     「いや、さっきのことは忘れていいよ。
            明日香も、お年頃なんだから、2人で楽しむんだよ、それじゃ」

(電話の会話終了)


70   明日香   「あ、切れた」

71   昇     「翔兄、なんて言ってた?」

72   明日香   「2人で楽しめって」

73   昇     「は? なんだそりゃ? で、肝心の居場所は?」

74   明日香   「ごめん、わからない」

75   昇     「はあ、なんだそりゃ? それじゃ、電話した意味ねーじゃん」

76   明日香   「あと、お兄ちゃん変なコト言ってた」

77   昇     「ヘンナコト?」

78   明日香   「えっとね、〝なんで電話に出たんだろう〟とか
            〝最後に話をしたかったのかもしれない〟とか」

79   昇     「なんだそりゃ? ますます、訳わかんねー」

80   ミク    「とうとう、来てしまったのね…」

81   明日香   「ミクちゃん? 難しい顔して、どうしたの?」

82   ミク    「小娘のお兄ちゃん…今、精神が、カナリやばいわよ」

83   明日香   「ミクちゃん、お兄ちゃんの精神がヤバイって、どういうこと?」

84   ミク    「小娘のお兄ちゃんの死が近いわ」

85   明日香   「そんな、どうして?」

86   ミク    「1つ、あんたたちに訊くけど、小娘のお兄ちゃん、
            命の危険を感じる事故に遭遇したことが、今までにあった?」

87   昇     「店では、ずっと見張ってたが、1度もなかったな。
            明日香は、どうだ? 家に居て、なんかあったか?」

88   明日香   「うんん、別に、命の危険を感じる事故はなかったよ」

89   ミク    「ホント、あんたたちは平和な頭してるわね~」

90   明日香   「それってどういう意味?」

91   ミク    「人の死へと結びつくパターンは、他にもあるでしょ?
            あんたたちは、その見落としているパターンを考えてないのよ」

92   明日香   「見落としてるって、何があるの?」

93   ミク    「人が死に結びついてしまうパターンは、病気で死ぬか、
            予期せぬ事故で死ぬか、決められた命の時間が亡くなったか…
            それともう1つ」

94   昇     「はっ!? そいうことか!?」

95   明日香   「え? 昇、わかったの?」

96   昇     「俺たちは、不慮の事故が起こるのを防ごうとしていたけど、違ったんだ」

97   明日香   「え? 違うの?」

98   昇     「そうか、翔兄が自ら命を絶つ可能性もあるんだ」

99   明日香   「そんな!? お兄ちゃんが、自殺だなんてありえない」

100  昇     「考えてみろ。思い当たるふしがあるんじゃないか?」

101  明日香   「も、もしかして…織姫さんのコト?」

102  昇     「やばい、急がないと、翔兄、死ぬぞ。もう1回電話しろ!」

103  明日香   「うん、わかった」


(電話をかけている)


104  明日香   「お兄ちゃん、早く出て。どうして、出てくれないの?」

105  昇     「どうした? 出ないのか?」

106  明日香   「ダメ。何度かけても留守番電話になっちゃう」

107  昇     「ああー、もう! 居場所さえわかれば、どうにでもできんのに
            どこに行けばいいのか、見当もつかねー。
            おい、神様! 翔兄の居場所わからないのか?」
   
108  ミク    「あのね~、前にも言ったけど、神様は万能じゃないの」

109  昇     「なんだよ、使えねーなー」

110  ミク    「人間ごときに、使えねー、とか言われるなんて、ムカツク!」

111  昇     「神様のくせに、なんか力使えよ」

112  ミク    「人を探す力はないの。小娘、あんたのお兄ちゃんから、何か聞いてないの?」

113  明日香   「え? 先に、お祭りに行ってるしか、言ってなかったけど」

114  ミク    「そうじゃなくて、祭りの思い出とかよ。人間は、思い出の場所、ってのに必ず行く。
            こんなイベントなんだから、なんかしらのエピソードがあるでしょ」

115  明日香   「そんなこと、急に言われても…う~ん…」

116  昇     「翔兄の命がかかってるんだからな」

117  明日香   「わかってるけど、そんな、簡単に思い出せないよ。う~ん…」

118  昇     「それでも、がんばって、思い出せ! 頼れるのは、お前しかいないんだぞ!」

119  明日香   「んん…あ、もうしかして、あれかな?」

120  昇     「思い出したのか!?」

121  明日香   「うん、前に、お兄ちゃんと織姫さんが、2人でお祭りに来た話を聞いたの。
            そこで、お兄ちゃんは、蛍を見たんだよ」

122  昇     「ほたる?」

123  明日香   「そう、この境内の奥にある湖は、蛍が見られるんだけど、
            そこに、お兄ちゃんが居るかもしれない」

124  昇     「よし、とにかく、その湖に行こう」

125  明日香   「うん、早く行こう。なんか、胸騒ぎがするよ」


(森の中)


126  昇     「おい、明日香。本当に、湖があるのか?」

127  明日香   「本当だよ、私だって、お兄ちゃんと来たことがあるんだから」

128  ミク    「そうそう、この湖は綺麗で、輝く蛍が美しいのよね~
            知っている人間は少ないけど」

129  昇     「でも、本当に翔兄が、湖にいるのか?」

130  明日香   「そんなの、行ってみなきゃ、わからないよ」

131  昇     「とにかく、信じるしかねーのか。頼む、翔兄、いてくれ」

132  明日香   「あと、もう少しで、湖に着くよ」


(湖)


133  昇     「お? 広いとこに出た。ここが、湖か?
            暗くて、よく見えないな」

134  明日香   「森を抜けたし、水の匂いがしてるから、湖に着いたはず。
            あっ!? あの明かり、人がいる。あれって、もしかして…」

135  昇     「翔兄!」

136  翔     「あれ? 明日香と昇じゃないか、どうしてココに?」

137  明日香   「それは、こっちのセリフだよ。なんど、電話しても出ないし、
            お兄ちゃん、どうして、誰もいない湖に1人でいるの?」

138  翔     「それは…ずーっと前に、織姫と来てね。
            一緒に蛍を見たから、もう一度、来てみたんだ。
            けど、蛍は居ないね。どうしてかな?」

139  明日香   「まさか、お兄ちゃん…湖に、飛び込む気じゃないよね?」

140  翔     「ははっ。そんなことあるわけ…」

141  明日香   「じゃあ、なんで、ここに来たの?」

142  翔     「それは…」

143  明日香   「織姫さんのことを、まだ想ってるからでしょ?
            だから、思い出の場所に来たんでしょ?」

144  翔     「……」

145  明日香   「お兄ちゃん、前に言ってたよね。
            お祭りの日に、織姫さんと神社の湖に行って、
            光る蛍をいっぱい見れて綺麗だった、って、嬉しそうに話してくれたよね?」

146  翔     「……」

147  明日香   「その話を思い出したから、お兄ちゃんは、ここに居ると思って来んだよ
            そして、お兄ちゃんは、湖に居る。
            これって、やっぱり、織姫さんの思い出があるから、来んだよね?」

148  翔     「明日香の言うとおりだよ。
            織姫との思い出があるから来んだ。
            けど、やっぱり来ちゃダメだったよ。
            忘れたいのに、忘れられないんだ…」

149  翔     「もう、嫌なんだ! 終わらせたいんだ! 
            こんな想いも! こんな体もいらないんだ!」

150  明日香   「お兄ちゃんっ! 落ち着いて!」

151  翔     「消したいのに、消えないんだ! 
            全然、消えないんだよ!
            だからもう、僕は生きていたくないんだ!」

天気:雨


152  明日香   「生きていたくないって…死ぬってコト?」

153  翔     「そうだよ、明日香。僕は、この湖に入って、
            織姫の所へ行くんだよ」

154  明日香   「何をバカなコト言ってるの!?
            私はどうなるの!?
            残された人たちは、どうすればいいの!?」

155  翔     「僕は、いくつもの痛みを抱えすぎたんだ。
            だから、これ以上、痛みを増やさないように、終わらせるんだよ」

156  明日香   「お兄ちゃん、バカなマネはやめて!?」

157  翔     「明日香に、僕の気持ちがわかるのかっ!?」

158  明日香   「そ、それは…」

159  翔     「ほら、答えられないだろ」

160  昇     「翔兄。俺の親父は5年前に死んだ。
            もう、これ以上、大好きな人たちを失いたくない。
            だから、こっちに戻ってきてくれ」

161  翔     「昇のお父さんが死んだコトは知ってるよ。
            けどね、僕の方が、想っていた時間は長いんだ。
            もう楽にさせてくれ。わがままな兄で、ごめんよ、明日香…」

162  ミク    「2人とも早くしろっ! 翔は死ぬ気よっ!」

163  昇     「マズイっ!?」

164  明日香   「お兄ちゃんっ!?」


(駆け出す2人)


165  翔     「さようなら…」

166  明日香M  「間に合わない――
            お願い… 助けて、神様…」


(ミクが神の力を発動する為の呪文)


167  ミク    「信仰の断りのもと、森羅の神が命ずる。冥界から蘇り、この地へ降臨せよ」


(神の力発動。杖を振るう)


168  織姫    「翔」


(織姫が翔の腕を引っ張る)


169  翔     「え?…」

170  明日香   「織姫…さん…」

171  昇     「織姫さんが…いる!?…」

172  翔     「織姫…どうして、織姫が、ここに?」

173  明日香   「これって、もしかして…」

174  ミク    「あたしが、あの世から呼んだのよ」

175  明日香   「それじゃ、本物の織姫さんが…」

176  織姫    「懐かしいね、翔。ここで一緒に、綺麗な蛍を見たよね」

177  翔     「そんなはずない。織姫が居るわけない」

178  織姫    「そうだよ、翔。もう、私は、翔の世界に居ないんだよ」

179  翔     「じゃあ、ここにいる織姫はなんなんだ!? 
            僕に、織姫の姿を見せてどうする気だ!?」

180  織姫    「伝えに来たの」

181  翔     「つたえにきた?」

182  織姫    「翔に、とっても、とっても大切なことを」


(翔の高校生時代)


183  翔N    「僕の高校に、新しい先生が来た。
            御宮島(みぐうじま)に、本州から人が来るなんて珍しかった。
            しかも、若い女性なので、男共は盛り上がった。
            けど、僕は、そんなのどうでも良かった」

184  織姫    「今日から、この学校の教師になりました。
            みんなと、早く仲良くなりたいです。
            よろしくお願いします」  

185  翔N    「そして、僕と織姫は出会って、しまった」


(金属バットの音、カキーン)
(野球ボールが、音楽室に入った)


186  翔     「ピアノの音?」


(音楽室でピアノを弾いている織姫)
(転がってきた野球ボールを拾う織姫)


187  織姫    「これ、キミのボール?」

188  翔     「は、はい」

189  織姫    「キミ。野球部なの?」

190  翔     「ええ、そうですけど」

191  織姫    「ポジションは?」

192  翔     「いちお、ピッチャーです」

193  織姫    「ピッチャーって、すごいね」

194  翔     「野球部は、9人しか居ないんですけど、
            それでも、甲子園目指してるんです。
            甲子園に行けたら、島にとっては初出場になるんです」

195  織姫    「へー、そうなんだ~。私は、頑張ってる人って、好きだな~」

196  翔N    「こうして、放課後は、毎日のように会って、
            自然と仲良くなって、色々と話すようになった」

197  織姫    「あのさ、島を案内してほしいんだけど、いい?」

198  翔     「ああ、かまわないよ」

199  織姫    「じゃあ、今度の日曜日は、どう?」

200  翔     「ちょうど、部活も休みだから案内できるよ」

201  織姫    「ああ、よかった。私、この島に、1人も知り合いが居ないの。
            それで、この島って、緑が多いでしょ? 
            海も綺麗だし、いろいろと見てみたいな~、って、
            この島に来たときに思ったの。      
            だから、色々と綺麗な場所を案内してくれる人を探してたんだ」

202  翔     「それなら、オバケ岬に行こう」

203  織姫    「お、なんか、面白そうな名前だね~」

204  翔     「暗くて、危険な場所だから、人が近寄らないように、
            オバケ岬って、みんなが呼んでるんだけど、
            面白い色した魚とか泳いでたり、
            海に太陽の光が反射して、宝石みたいに綺麗なんだよ」

205  織姫    「へえ、そうなんだ。行くのが楽しみ~」

206  翔N    「そして、僕たち2人で島巡りをした。
            夕日の沈む海を眺めながら、僕達は特別な関係になった」
       
207  織姫    「私は、1人暮らしだから、不安だった。
            でも、翔がいたから、平気になった。
            ありがとう」

208  翔N    「そういって、微笑んだ彼女の横顔は少女のように可憐だった。
            織姫は、音楽の教師で、島でやってる合唱サークルの顧問をやらされている。
            そして、全国大会に出場する為、彼女は悩んでいた」

209  織姫    「町長さんが、張り切っちゃってね。全国目指すんだ! って
            私、この島に来たばかりなのに、たくさんの初めてをやらされてるよ。
            うまく、できるかな?」

210  翔     「大丈夫だよ、織姫なら、うまくできるよ。
            悩みとかあるなら、僕に、なんでも言って。恋人同士なんだからさ」

211  織姫    「ありがとう。翔は優しいね。
            私、優しい人は好きだよ。ふふっ」
 
212  翔N    「あの時、もっと話を聞いとけばよかった。
            僕も、野球部の練習で忙しかった。
            織姫も、慣れないことをやらされて、悩んで苦しいのは、わかっていたけど、
            2人だけの時間が足りなかった」     

213  織姫    「あなたは、わかってると思ってたのに!
            どうして、わからないの!」

214  翔     「僕だって、キミに構ってる暇はないんだ!
            野球部が、大切な時期だって知ってるだろ!?」

215  翔N    「織姫は、全国大会のことで、不安と不満が溜まっていた。
            そして、ついに倒れてしまった。
            入院して、安静にしろと医者に言われた。
            織姫は、御宮島に、たった独りで来た。
            そして、頼れるのは、恋人である僕しかいない。
            一番、近い存在で、一番の理解者なのに、
            僕は…織姫を理解できず…罪を作った…」

(病院)


216  織姫    「私、ガンだって。
            人間って、強くないんだね」

217  翔     「すまない、キミの体が蝕んでるなんて、
            まったく気づけなかった。ごめん」

218  織姫    「気にしないで。あなたのせいじゃない。
            私が、全部、いけないんだから」

219  翔     「いや、僕が、もっと織姫を、ちゃんと見ていれば、
            こんなことにはならなかった…」

220  織姫    「心配しすぎ。
            病院の先生だって、もう少しで退院できるって言ってたから、大丈夫」

221  翔N    「だが、織姫の言葉は、現実には、ならなかった。
            当然、全国大会へは行けなかった。
            しかも、予選で負けて、織姫は余計に責任を感じて、
            体調が、急激に悪化していき…」

(現代)


222  翔     「織姫…キミは、死んだんだ…
            今更、僕に、何を伝えるって言うんだ?
            目の前に姿を現して、何がしたいんだ!?」

223  織姫    「だって、まだあなたは、私を想っている」

224  翔     「そ、それは、僕が織姫を殺したようなもので…
            恋人なのに、守ることができなかった…
            もっと、キミのことを気にかけていたら、
            こんなことには、ならなかった…」

225  織姫    「いつまでも、私を想ってくれるのは、とても嬉しい。
            だから私は、あなたのコトを好きになったんだと思う。
            私は後悔してないよ、好きな人が翔で良かった」

226  翔     「僕だって、織姫を好きになれて良かった。
            後悔なんかしてない。ウソじゃない、本物の気持ちだよ」

227  織姫    「けど、私に縛られたままで、あなたが幸せにならないのは、もっとイヤ」

228  翔     「なら、どうすればいいんだ!?
            10年も経つのに、いまだに忘れられないんだ!?
            あの時、キミを救えたかもしれないのに!?
            織姫を助けることが、出来たかもしれないのに!?
            僕は…僕は…少しも、力になれなかった…」

229  織姫    「翔、あなただけが、辛いんじゃない。
            私だって辛い。
            私のせいで、翔が幸せにならないなんて、耐えられない」

230  翔     「はっ!? …織姫も、辛い…」

231  織姫    「あのね、翔。私を忘れなくていいんだよ」

232  翔     「え?」

233  織姫    「でもね、私は、あなたの世界に居ない。
            どうやっても、現実にいる人の方が、存在の力は強いんだよ。
            だから、現実の世界で幸せを作って。
            そうすれば、私の姿は弱くなって、
            現実が大きくなって、かけがえのない存在に変わるんだよ」

234  翔     「何言ってるんだ!? 織姫意外に考えられない!
            だから、いまだに僕は…」

235  織姫    「私が、翔の立場になったら、そんなことはしない」

236  翔     「しないって…どうして?」

237  織姫    「もし、翔が居なくなっても、私は翔の分まで幸せになる。
            だって、私は頑張る人が、好きだから。
            それに、人間が不幸に生きるなんて、そんな人生もったいない。
            1度しかない人生なんだから、棒にふるようなコトしないで」

238  翔     「そんなこと、知ってるよ…知ってるけど…」

239  織姫    「だからね、私の心の中で、翔が生きてればいいんだよ。
            いつまでも、心を曇らせたまま生きてるなんて、ダメだってわかるでしょ?
            あなたは、あの時のままじゃなくて、すでに立派な大人なんだから進まなきゃ。
            過去に囚われたまま生きないで、未来を望みながら生きて。
            私は、そんな翔が、心の底から大好きです。
            出逢ってくれて、ありがとう…」

240  翔     「織姫…僕は…僕は…
            君に出会って良かったよ。
            心から言えるよ。
            本当に、ありがとう…」

241  織姫    「ねえ、明日香」

242  明日香   「な、なんですか、織姫さん?」

243  織姫    「翔は、もう大丈夫だと思うけど、
            心配だから、最後まで、よろしくね」

244  明日香   「は、はい! 任せてください」

245  織姫    「ありがとう、私の可愛い妹さん。
            そして、小さな神様もありがとう。
            また、翔に逢わせてくれて。
            とっても、うれしかった」

246  翔     「神様?」

247  明日香   「そうなんだよ。お兄ちゃんには、見えないけど、
            ここに、ちゃんといるんだよ」

248  翔     「神様か…明日香には見えてるんだね。羨ましいな。
            神様、織姫に、逢わせてくれて、ありがとう。
            せっかく、貰った僕の命。未来のために使います」




       
天気:快晴


(翌日の店内)


249  昇     「翔兄、お世話になりました」

250  翔     「こちらこそ、ありがとう」

251  明日香   「お兄ちゃん、お世話になりました」

252  翔     「はい、ご苦労さま」  

253  昇     「やっぱり、明日香も辞めるのか」

254  明日香   「だって、お祭りのために働いてたんだもん。
            これからは、沢山、遊ぶの」

255  翔     「まあ、高校生の夏休みは貴重だからね。
            働くより、遊んだほうがいいよ」

256  明日香   「さすがお兄ちゃん。よくわかってる~」

257  昇     「さ~て、俺はこれから、野球部の練習だ~」

258  明日香   「がんばってね」

259  昇     「当たり前だ。甲子園、目指してるんだからな」


(カウンター)


260  翔     「いらっしゃいませ。ご注文は、何にいたしますか?」

261  謎の女性  「あの、えっと…コーヒーをください」

262  翔     「かしこまりました。少々、お待ちください」 


(店内奥)


263  昇     「もう、帰るのか?」

264  ミク    「だって、小娘のお兄ちゃんの命を守ったんだから、
            あたしが居る意味ないでしょ?」

265  昇     「確かに、そうだけど」

266  明日香   「なんだか、寂しくなるね~」

267  ミク    「あのね~、本来の生活に戻るだけでしょう」

268  明日香   「それはそうだけど、なんかね」

269  昇     「神様が居る生活も、なかなか面白かったしな」

270  ミク    「あ、そうそう。あたし、本当は、未来なんて見れないの」

271  明日香   「えええ!? じゃあ、なんでお客さんの注文を当てたのよ?」

272  ミク    「そんなの、心を読んだからよ」

273  明日香   「ああ、なるほど~。そういうことか~」

274  昇     「ああ~…騙された俺は、一番情けねー…」

275  明日香   「でも、なんでお兄ちゃんがお祭りまでに死ぬってわかったの?」

276  ミク    「翔は、織姫のコトを強く思っていた。
            それと同時に、抱えきれないほど、辛さを積み重ねた。
            楽になるには、死ぬしかなかったのよ」

277  明日香   「でも、お祭りまでに死ぬって、なんで言い切れたの?
            未来が見えないのに?」

278  ミク    「きっかけがあれば、翔は、いつでも命を捨てるつもりだった。
            お祭りというイベントと、織姫の思い出がある、
            特別な日を選ぶのは心を読まなくても推測できるわ。
            そのきっかけが、小娘と昇が喫茶店で働き初めて、明日香が昇を好きだと
            思って、翔は織姫の思い出がよみがえった」

279  明日香   「ああ~、そういうことか~
            そこまで考えてたなんて、ミクちゃん凄いね」

280  ミク    「あたしは、翔のために出てきたわけじゃないの!」

281  明日香   「え?」

282  ミク    「小娘、あんたのために出てきたの」

283  明日香   「私のため?」

284  ミク    「あんたは忘れてるかもしれないけど。
            幼稚園でブランコの取り合いでケンカしてたとき、
            昇が助けてくれたでしょ。
            それから、あんたは昇のことが好きになったの」
 
285  明日香   「んん…? そんあことあったかなぁ?
            あんまり、覚えてないよ」

286  ミク    「でも、あんたは昇のことが好きだって気持ちは変わってないはずよ」

287  明日香   「変わるも何も私は――」

288  ミク    「あんた、昇が出てる野球の試合に毎回応援行ってるでしょ」

289  明日香   「うん」

290  ミク    「昇が練習してる姿、いつも見てるでしょ」

291  明日香   「うん…」

292  ミク    「昇のためなら、力になりたいと思ってるでしょ」

293  明日香   「そりゃあ、思ってるけど…」

294  ミク    「それだけあれば、十分でしょ」  

295  明日香M  「もしかして…そうか、そうだったんだ。
            私は、昇のこと、好きだったんだ。
            私は、幼馴染だから、昇のことは良く知っている。
            だから、がんばってる昇の姿を、いつも追っていた」

296  ミク    「ホント、気づくの遅すぎ。
            だからあたしは、あんたの臆病を直してあげたの。
            翔を助けるために、昇と協力すれば本当の自分の気持ちに
            気づくと思ったから手を貸してあげたの。
            あ~あ、こんな人間のために、なんで力つかってんのよあたしは。
            あー、もったいないコトしたわ」

297  昇     「さっきから、2人だけで何、話してんだよ」

298  明日香M  「うわ!? なんか、昇の顔見れない」

299  ミク    「乙女の会話に男が首突っ込むものじゃないの!」 

300  昇     「なんだよそれ~」

301  ミク    「ふふっ、そろそろ帰るわね。
            あんた達と遊べて楽しかったわ。それじゃーね~」

302  明日香   「待って、ミクちゃん!」

303  ミク    「なによ、小娘」

304  明日香   「湖で、お兄ちゃんを助けてくれてありがとう。
            やっぱり、ミクちゃんは優しいね」

305  ミク    「小娘が頼りないから、神の力を使っただけよ」

306  明日香   「ホント、素直じゃない神様。
            また会えるよね?」

307  ミク    「ふんっ、そんなの、当たり前でしょ。
            あたしは、この御宮島(みぐうじま)の神様なのよ。
            いつだって、あんた達のそばに居るんだからね」

308  明日香   「そっか、そうだよね。ミクちゃんは、御宮島の森の神様だもんね。
            でも、やっぱり寂しいよ」

309  ミク    「悲しい顔しないの。
            あんたは、笑顔でいるのが素敵なんだから」

310  明日香   「ミクちゃんが…最後に褒めた…」

311  昇     「へ~、気の利いたことするじゃねーか」

312  ミク    「あと、小娘。自分の心にウソつくんじゃないわよ。
            神様の目は誤魔化せないんだから。
            心の言葉を素直に受け止めたら、あんたの目標は達成できるの。
            未来は神様だって作れないのよ。
            だから、理想の未来を掴む為に、命を繋ぎなさい。
            それじゃ、明日香、昇、バイバ~イ」

313  明日香   「バイバイ、私たちの神様」

314  昇     「じゃーな、俺たちの神様」


(森の神様、空へと消える)


315  明日香   「行っちゃった…」

316  昇     「ああ、行ったな。でも、面白い神様だったな」

317  明日香   「口は悪かったけど、楽しかった。
            優しい神様だった。助けてって頼んだら、
            お兄ちゃん助けてくれたし」

318  昇     「最後にあいつ、心にウソをつくなって、言ってたけど、
            アレって、どういう意味だ?」

319  明日香   「そんなの、女の子同士の秘密なの」

320  昇     「は? なんだそりゃ? 教えてくれたって、いいだろうがー」

321  明日香N  「それは、ごく普通の女子高生とミクちゃんという神様との約束だから、
            昇には教えるわけにはいかない。
            だって、昇が知ったら、うまくいかないもんね」

(カウンター)


322  謎の女性  「このコーヒー美味しいですね」

323  翔     「ありがとうございます」

324  謎の女性  「あの、私、今日、御宮島(みぐうじま)に来たばかりで、
            働くところを探してるんです。
            ついでに言うと、1人暮らしできる部屋も探してます。
            このカフェって、従業員、雇ってますか?」

325  翔     「えっと、その…申し訳ないですが――」

326  明日香   「お兄ちゃん。私と昇、2人の従業員が居なくなったんだよ。
            補充しなきゃ」

327  翔     「あ…ああ。そうか、そうだね。新しい従業員が必要だよね」

328  謎の女性  「やったー! このお店の雰囲気、いいですよね。
            オシャレですよ。あなたが、やったんですか?」

329  翔     「ええ、そうですよ。いちお、僕、店長なんで」

330  明日香   「お兄ちゃんが、笑った」

331  昇     「もう、過去に縛られてないようだな」

332  明日香   「よかった。なんか、晴れたような笑顔だよね」

333  昇     「なんだ、その表現は?」

334  明日香   「いいでしょ。いつもは、困ったような笑顔だったけど、
            今は太陽みたいな眩しい笑顔のお兄ちゃん。
            私は好きだよ。いつまでも、あの笑顔が続くといいな~」

335  昇     「ああ、確かにな」

336  明日香N  「ミクちゃん、本来の生活に戻ったけど、
            新しい生活が始まるよ。
            私は、なんだかワクワクしてるんだ。
            だって、これから素敵なことが、いっぱいあるんだもの。
            だからね、私、頑張るよ。自分の心にウソをつかないように生きるよ。
            そうすれば、幸せな未来がつかめるんだよね。
            だから、いつまでも見守ってよね、私たちの神様」





       ―最終話、終了―




337  昇   「お供え物もしたし、」

338  明日香 「ミクちゃん、喜んでるね」

339  昇   「アイツのニヤケ面が想像つくけどな」

340  明日香 「それじゃ、おばけ岬に行こう」

341  昇   「おう、行こうぜ」

342  ミク  「ふふっ、やっぱり、人間は面白いわね~」



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声音楽園3ねん8くみの担任である春トでございます。 楽しいクラスにしていきたいですね。
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