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あしたも晴れる 2話 「愛の結晶(ヴィオトポス)」

原作:春ト

この台本の
著作権は作者にあります。
著作権は放棄してません。

キャラクター紹介(イラストあり)
http://ch.nicovideo.jp/3nen8kumi/blomaga/ar456286


《配役》

天上明日香♀(てんじょうあすか)17歳【ワード数:131】
矢島昇♂(やじまのぼる)17歳【ワード数:42】
天上翔♂(てんじょうかける)26歳【ワード数:39】
森の神様♀見た目10歳の妖精:あだ名は『ミクちゃん』【ワード数:55】
雪♀(ゆき)26歳【ワード数:59】
雹♂(ひょう)26歳【ワード数:11】




総ワード数:338




性別比率
♂3:♀3




サブタイトル「愛の結晶(ヴィオトポス)」




天気:晴天


(祠の前)


1   明日香  「はあ~…今日も暑いな~
          なんでこんなに暑いんだろ? まあ、夏だからしょうがないんだけど、
          太陽頑張りすぎでしょ。少しは休んでよね~
          お店に行くだけで汗だくになっちゃうよ。
          けど、暑くないとお客さん来ないんだよね~
          ああー! どうしたらいいんだろ~
          おっと、お地蔵さんだ。今日も拝んでいこう~」


(地蔵の前で拝む)


2   明日香  「今日も、平和にお仕事できますように。
          あと、お兄ちゃんが、今日も生きていけますように、お願いします。
          って、私、神様見えるんだから、改めて拝む意味あるのかな?
          あとで、ミクちゃんに聞いてみよう、っと」
           
3   ミク   「呼んだ?」

4   明日香  「うわっ! ミクちゃん!?」

5   ミク   「偉いじゃない、ちゃんと拝んでるなんて」

6   明日香  「へへ、バイト始めてから、毎日拝んでるんだよ~」

7   ミク   「そんなの知ってるわよ。だって、その地蔵は、あたしなんだから」

8   明日香  「やっぱりそうだったんだ」

9   ミク   「それよりも、こんな所で、油売ってていいの?」

10  明日香  「やばい! 時間ギリギリだ! お兄ちゃんに怒られないうちに、早く行かないと!」


(店内)


11  明日香  「いらっしゃいませ! 天上庵へ、ようこそ! お好きな席へ、どうぞ」

12  明日香M 「ふふ…お兄ちゃんのカフェで働き始めてから5日目。だいぶ、接客に慣れてきたぞ。
          これで、お小遣いアップも間違いなしだね」

13  ミク   「お小遣いアップする訳ないでしょ」

14  明日香  「うわっ!? ミクちゃん!! ちょっと、人の心読まないでよ」

15  ミク   「あたしは神様なんだから、人間の心くらい読めるわよ」

16  明日香  「すごいな~、やっぱりミクちゃんは、『森の神様』なんだね~
          予言も当たるし、人の心も読めちゃうなんて、サイコーだね」

17  ミク   「はあ~…あんたね~、神に名前を付けて、堂々と呼んでる小娘が憎たらしいから、
          心を読んで、ワザとイジメてるのよ」

18  明日香  「ホント、可愛くない、神様! なんで、こんなにも口が悪いんだろ」

19  翔    「明日香~、なにブツブツしゃべってるんだい?」

20  明日香  「わ、私、コップ洗ってくるね~」


(店内奥)


21  明日香  「は~、危なかった~。やっぱり、お店の中でミクちゃんと喋ってると、
          変に思われるよ」

22  ミク   「当たり前でしょ。あんたと昇しか、見えないんだから」

23  明日香  「それはそうなんだけど。ミクちゃんが、話しかけたからじゃん」

24  ミク   「勝手に、あんたが喋ってるの」

25  明日香  「あのね~。ミクちゃんが、意地悪するからでしょ!」

26  ミク   「ふん! やめないわよ。面白いんだから!」

27  明日香  「面白いからって、人の迷惑考えてよね。このヘッポコ神様!」

28  ミク   「あんた、神に向かって、ヘッポコってなによ!」

29  明日香  「人間イジメる神様は、ヘッポコなの!」

30  ミク   「人間の小娘ごときに、ヘッポコなんて呼ばれたくない!
          あんな接客ごときで、満足してるようじゃ、まだまだね。
          だから、あんたは、ポンコツよ」

31  明日香  「なんで、ポンコツなのよ」

32  ミク   「ポンコツだから、ポンコツって言って、何が悪いの!」

33  昇    「お前ら、仲いいな」

34  明日香&ミク「よくない!」 

35  昇    「ハモるんだから、仲いいんじゃねーのか。
          それよか、デカイ声で、何言い争ってたんだ?」

36  明日香  「このヘッポコ神様が――」

37  ミク   「このポンコツ小娘が ̄ ̄」

38  昇    「ああー、もういい。訊いた俺が悪かった」

39  明日香  「ふんっ! ヘッポコだから、お兄ちゃんが、いつ死んじゃうのか、
          どうやって死んじゃうのか、わからないんでしょ!」

40  ミク   「このポンコツ小娘! 神様が、なんでもできると思うんじゃないわよ」

41  昇    「確かに、俺も疑問に思ってた。未来予知が出来るくせに、なんで明確じゃないんだ?
          注文とかは、ずばり言い当ててたのに、おかしいんだよな」

42  ミク   「昇まで、神様に期待しすぎ。人の命が消えることはわかってるの。
          それが、何月何日何時何分で、
          どうやって生涯を閉じるのか、なぜ見えないのか、あたしにもわからないのよ。
          あんた達、忘れるんじゃないわよ、神様は万能じゃないの」

43  明日香  「それさえわかれば、守れるんだけど。お祭りまでって、
          どうしてそんな呪いみたいなのがかかってるんだろ?」

44  ミク   「それは、おそらく、あんたのお兄ちゃんの…って、
          神のくせに、たった1人の人間に、でしゃばりすぎか」

45  昇    「なあ、森の神様。どうやって死ぬのか、わからないんだよな?」

46  ミク   「そうよ。神でも、わからないことは、たくさんあるの」

47  明日香  「でも、急に病気で死ぬってことはないよね。だから、お祭りまでの命ってコトは
          急に死んじゃうんだから、不慮の事故しか考えられないよね」

48  昇    「ああ、俺もそれを考えてた。いつ、どこで起こるかわからないから、
          ずーっと翔兄を監視しなきゃいけない」

49  明日香  「けど、ずーっと監視って、難しいよね~。なんか、ヒントとかないの?」

50  ミク   「う~ん、そうね~…たとえば、山から岩が落ちてきて潰されるとか、
          もしくは、歩いてたら転がってくる岩に追いかけられて潰されるとか、
          あるいは、店の外で掃除してたら岩が降ってきて潰されるとかじゃない?」

51  明日香  「どうでもいいけど、どうして岩で潰される限定なの?」

52  昇    「まあ、とにかく、何が起こるかわからないんだ。
          祭りまでに、翔兄を守りきれば、死ぬことはないんだよな」

53  ミク   「そうよ、祭りが終われば、あとは普通に生きるわ。たぶん…(呟く)」

54  明日香  「だから、祭りまでに、お兄ちゃんが生きていれば、普通に人生をおくれるんでしょ?」

55  ミク   「そうね、祭りまでに、あんたのお兄ちゃんを守りきれば、の話だけど」

56  明日香  「よーし、昇。がんばろうね」

57  昇    「そんなの、当たり前だろ、明日香!」

58  翔    「おーい明日香、昇。ボクはおつかいに行ってくるからねー」


(店内)


59  明日香&昇「ちょっと待ったぁぁーー!!!!」

60  翔    「すごい、ハモったね~」

61  明日香  「お兄ちゃん、私がおつかいに行くよ」

62  昇    「翔兄、俺が行くよ」

63  明日香  「昇は、店に残りなさいよ」   

64  昇    「明日香こそ、店に残れよ」

65  明日香  「あんたね! お兄ちゃんが、車にひかれて死んじゃったらどうするの!?」

66  翔    「あの~、明日香。御宮島(みぐうじま)には、バスが1台しか走ってないから、
          そう簡単にひかれないと思うよ」

67  明日香  「そんなのわかんないでしょ! よそ見してたら、後ろからひかれることだってあるんだよ!?」

68  翔    「わかったよ。僕は行かないから、2人で行けばいいと思うよ」

69  昇    「いや、それはダメだ」

70  明日香  「そうそう、お店で何が起こるかわからないし」

71  翔    「なんだか、よくわからないけど、2人とも、僕を心配しすぎだと思うよ?」

72  昇    「じゃあ、おつかいは俺が行く。明日香は、店に残れ」

73  明日香  「OK、任せといて」

74  翔    「どうして、2人とも気合が入ってるんだろう?」

75  明日香M 「これで、お兄ちゃんは、死ななくて済む。
          でも、こんなコト、毎回出来るのかな~?」

76  ミク   「頑張ってやるしかないでしょ」

77  明日香  「それりゃあ、そうなんだけど…って、また心を読んで」

78  ミク   「小娘だけじゃないの。昇だって居るんだから、たまには甘えたらどうなのよ」

79  明日香  「なんで、私が昇に甘えなきゃいけないの」

80  ミク   「ホント、素直じゃないんだから、だからいつまで経っても…」

81  明日香  「なんなのよ、昇、昇って」

82  昇    「なんだ明日香?」

83  明日香  「わっ! 昇、いたの!?」

84  昇    「ああ、もうすぐ出るけど、何か呼ばれたから来た」

85  明日香  「呼んでない、呼んでない」

86  ミク   「自分のお兄ちゃんを、ちゃんと守りきれるか、小娘は不安なのよ」

87  明日香  「ちょっと、ミクちゃん、言わないでよ」

88  昇    「はっ、そんなことか。お前より、俺の方が不安だったよ」

89  明日香  「へっ? 昇が、不安って…」

90  昇    「俺は、1人で翔兄を守るつもりだった。けど、俺だけで本当に守れるのか不安だった。
          でも、明日香に神様が見えたおかげで、
          余計に翔兄を守りたくなったんだよ。協力してくれて、ありがとう」

91  明日香  「ありがとう、って、昇が私に言うなんて思わなかった」

92  昇    「そ、それぐらい言えるぞ。じゃあ、行ってくる」

93  翔    「コーヒー豆を、ちゃんと届けるんだよ~。
          住所はさっき渡したメモに書いてあるからね~。
          それじゃあ、気をつけて行くんだよ~」

94  昇    「ああ、わかってるよ。いってきまーす」

95  明日香M 「そうか、昇も不安だったんだ。
          けど、ありがとうって言葉が、昇の口から出るなんて思わなかった。
          え? なに? 私、なんかドキドキしてる。もしかして、嬉しいの?
          いや、そんなコトない。と、思うけど、なんだろ、この気持ち。
          よくわからないけど、イヤじゃない…」

96  ミク   「ほら、ノロケてないで、自分の大切なお兄ちゃんを守りなさい」

97  明日香  「わ、わかってるよ、もう、うるさいな、ミクちゃんは」

98  ミク   「ちゃんと聞こえてるんだから、仕事しなさいよ」

99  明日香  「ほんとに、意地悪な神様~」

100 ミクN  「昇が出かけた後、小娘こと、明日香は兄である翔をじーっと見張っていたんだけど、
          気持ちが悪いと言われて、翔を不快にさせてたわね。
          で、1時間もしないうちに、昇が帰ってきても、
          命に関わるような大事故は起こることはなく、
           平和に午後2時が訪れようとしてるわ」

101 明日香  「あのさ~、死ぬ、って、なんだろうね?」

102 昇    「何を言い出すんだ、急に」

103 明日香  「急じゃないよ。だって、お兄ちゃんが、もうすぐ居なくなるかもしれないんだよ?」

104 昇    「バカヤロー! そんなこと、ぜってえー、させねー。
          明日香は、翔兄が居なくなってもいいのかよ?」

105 明日香  「違う、そうじゃなくて、お兄ちゃんが死んじゃうって考えられないの」

106 明日香  「もし、お兄ちゃんを守れなかったら、どうなるの?
          昇は、お父さんをなくしてるよね、その時、どうだったの?」

107 昇    「それは、悲しかった」

108 明日香  「それだけ?」

109 昇    「それだけって…それだけじゃないけど、言葉に表せない」

110 明日香  「私は、お兄ちゃんが居なくなった世界は、ありえないよ。
          だって、どう考えたって、居なくなると思えない」

111 昇    「けど、神様は言ってるんだぞ。信じるしかないだろ」

112 明日香  「でも…神様だからって、なんでも決められたコトに
          人間が従うなんて、おかしいよ」

113 明日香  「自分の意思で動いてるのに、誰かの意思で動かされてるなんて嫌じゃない。
          たった1度の人生なんだから、初めから決められたまま進みたくないよ。
          運命を変えなきゃ」

114 昇    「その運命を変えようとしてんだろうが」

115 明日香  「だから負けないよ、ミクちゃん。人間の底力みせるからね」

116 ミクM  「おもしろいじゃない。見せてもらおうじゃないの、人間の底力ってやつを」

117 翔    「明日香と昇、何やってるんだい? お客さんがくるかもしれないから、店の中にいてよ」

118 明日香  「あ、うん。今行く」

119 昇    「さあ、仕事しなくちゃな」

120 ミク   「小娘のお兄ちゃん。あんた、死ぬかもしれないよ」

121 明日香  「ちょっと、お兄ちゃんに、話しかけないでよ」

122 翔    「どうしたんだい、明日香?」

123 明日香  「ううん、なんでもない」

124 ミク   「あんたは、幸せもんだよ。妹が、命を守るって頑張ってるんだからさ」

125 翔    「ああ、本当に助かるよ」

126 ミク   「え? あたしの声、聞こえるの?」

127 翔    「明日香が3番テーブル片付けてくれたから、
          お客さんがスムーズに入れるから、本当に助かるよ」

128 ミク   「聞こえるわけないか。見えるのは、小娘と昇だけなんだから」


(客が入る)
     

129 明日香  「いらっしゃいませ、天上庵へ、ようこそ。って、雪さん!?」

130 雪    「よう、明日香。久しぶり~」

131 明日香  「久しぶりって、私が中学生の時に、会ったきりだよ。
          そのお腹、大きいけど、もしかして…」

132 雪    「そう、あたいのお腹に赤ちゃんが、いるんだよ」

133 明日香  「すごい! じゃあ、雹さんの子でもあるね」

134 雪    「当たり前だろ! これで、他の男の子供だったら、結婚した意味ないだろ」

135 明日香  「いいな~。好きな人と結ばれるって。
          女子は憧れるよ~」

136 雪    「そうだろそうだろ。お前も結婚しな」

137 明日香  「いやいや、私は高校生ですから、結婚は早いよ」

138 雪    「え~、あたいの友達は17歳で、結婚したけど?」

139 明日香  「早!? どうして、そんな早く結婚したの!?」

140 雪    「うんと~、お腹の中に子供がいたんだよ。
          そんで、高校やめて、幸せな家庭を築いてるよ」

141 明日香  「色々と事情があるんだね。ところで、雪さん」

142 雪    「おう。なんじゃい」

143 明日香  「結婚して、何か変わったことある?」

144 雪    「苗字が変わった。明日香の場合は、天上明日香から矢島明日香になるな」

145 明日香  「なんで、矢島にならなきゃいけないの」

146 雪    「だって、昇は、矢島って苗字じゃん」

147 明日香  「いやいやいやいや、ありえないから」

148 雪    「ホントか~?」

149 翔    「世間話もいいけど、注文してからにしてくれないかな?」

150 雪    「翔じゃねーか。久しぶり~」

151 翔    「どうしてだろう。同じ島に住んでるのに、3年くらい会ってないような気がするよ」

152 雪    「まあ、お互いに、忙しいからだろ?」

153 昇    「注文どうぞ」

154 雪    「おっ! 昇じゃねーか。なんだ、カフェで働いてんのか?」

155 昇    「夏休みの間だけ」

156 雪    「へー、偉いな~。ずいぶんと成長したもんだ。
          お前、カッコよくなったな。モテるだろ?」

157 昇    「全然モテねーし。そんなことは、いいから注文しろよ」

158 雪    「なんだよ、仕事熱心だな~。ほんじゃ、ミルクちょうだい」

159 昇    「はいよ、少々、お待ちください」

160 明日香  「それにしても、お腹、ずいぶん大きいね、何ヶ月?」

161 雪    「9ヶ月だ。もうすぐ産まれるよ」

162 明日香  「おう!? それはすごいね。
          あのさ、お母さんになるって、どんな気持ち?」

163 雪    「う~ん、そうだなぁ…正直なこと、言っていいか?」

164 明日香  「う、うん、いいよ」

165 雪    「あたい、本当は、怖いんだよ」

166 明日香  「こわい? どうして? 嬉しいんじゃないの?」

167 雪    「そりゃ、好きな人の〝愛の結晶〟が、あたいの中にあるのは嬉しいさ。
          けど、あたいがお母さん、っていうのが信じられないのさ」

168 明日香  「どうして、信じられないの?」

169 雪    「だって、あたいがお母さんだよ? 子供を、ちゃんと育てられるのか、
          五体満足で産んであげられるのか、グレないように、どうやって教育をしようか、
          数え切れない不安が、あたいに圧力をかけるんだよ。
          でね、あたいのお母さんに訊いたんだ。
          『どうやって、お母さんは、あたいのお母さんになったんだ?』って。
          そしたらさ、なんて答えたと思う?」

170 明日香  「う~ん、わかんないよ」

171 雪    「それがさあ、
         『アンタも、親になる時が来ただけで、すでに覚悟は出来てるんだ。
          アンタは、生まれてくる子供のお母さんになればいいんだよ』
          って、言われたよ。ま、当たり前のコトしか言ってないんだけど、
          ああ、やっぱりあたいは、この人がお母さんで良かった、って思ったんだ。
          だからさ、なってみなきゃわからないんだよ」

172 明日香  「でも、お母さんになれるのは、嬉しいんだよね」

173 雪    「そりゃそうさ、嬉しいに決まってるだろ」

174 ミク   「小娘、良く覚えておきなさい」

175 明日香  「みんながいる前で話しかけないでよ」

176 ミク   「神のありがたい言葉を聞きなさい」

177 明日香  「ありがたいコトバ?」

178 ミク   「命ある者、必ず死ぬ。
          死ぬということは、悲しくて、切なくて、
          存在が消えてしまって、どこにも無いの。
          世界中、探したって代わりなんて、1つもない。
          けどね、消えるばかりじゃなくて、命は生まれるの。
          生命は、枯れやしない。あたしは、それを何度も何度も見てきた。
          でも、傍観者のあたしは、口を出すことは許されなかった。
          たとえ、知っていても教えるなんてできなかった」

179 明日香  「許してもらえなかった?
          ミクちゃん、私と昇に、お兄ちゃんが死ぬって、
          教えてるけど…もしかして…」

180 ミク   「〝死ぬ〟と〝生まれる〟の繰り返しだってわかってる。
          けど、人間が死に直面した時、
          どんな行動を起こすのか、見たくなっただけよ」

181 明日香  「そうか…ミクちゃんは、1000年も見てきたんだよね。
          この島で生まれた人たちと、死んでしまった人たちを。
          そして、言いたかったけど、言えずに我慢してたんだね。
          たくさん、たくさん、見てきたのに…」

182 明日香  「死ぬ時期がわかっていれば、時間が尽きるまで
          思い出をたくさん作れたかもしれない。
          けど、神様は意地悪だから教えてくれない。
          だって、教えちゃったら本物って感じしないから」

183 明日香  「でも、ミクちゃんは教えてくれた。
          これは貴重な時間だから大切にしなきゃいけない。
          しかも、それが自分たちの力で止められるかもしれない。
          居なくなってしまうかもしれない、大切な人を守れる。
          これって、最高の幸運に恵まれたよ。
          本当に、ミクちゃんに会えて良かった。
          お兄ちゃんを助けられるなんて、奇跡だよ。
          神様は、やっぱり優しんだね。
          人間を見捨てたりなんかしないんだね。
          ありがとう…本当に、教えてくれて、ありがとう…
          あれ? 涙が、あれ?」

184 翔    「明日香? どうしたの?」

185 雪    「明日香!? なんで、泣いてんの?」

186 昇    「いや、これは、なんでもないんだ。
          な、明日香、奥へ行こう」

187 明日香  「う、うん。ごめん、昇」

189 雪    「明日香、死ぬのがどうのこうの、とか言ってたな。あ、すまない、翔」

190 翔    「なんで、謝るのさ?」

191 雪    「だって…織姫先生のこと、が、さ…」

192 翔    「そのことか…」

193 雪    「ほら、やっぱり、お前の中で、織姫先生は――」

194 翔    「そんなの、とうの昔に終わってることだよ」

195 雪    「だったら、今、付き合ってる人は、いるのか?」

196 翔    「ふっ、そんなのいないよ」

197 雪    「じゃあ、好きな人は、いるのか?」

198 翔    「それもいないね」

199 雪    「やっぱり、翔の中で、織姫先生は、生きてるんじゃねーのか?
          まだ、踏ん切りがつけられねーんじゃねーのか?
          終わってるって強がりだろ?」

200 翔    「雪、それは、違うよ…」

201 雪    「翔が、まだ織姫先生を想っているから、
          この店に従業員の女の子を入れないんじゃないのか?」

202 翔    「なんで、そんなことになるのさ」

203 雪    「今、見る限り、店員は、翔と明日香と昇の、3人しかいない」

204 翔    「ウチは、儲かってないからね、従業員を雇えないだけさ」

205 雪    「違うね。翔は、恐れてるんだよ。
          失うのが、怖いだけさ」

206 翔    「そんなコトない! …そんなコトは、ないんだ…」


(倉庫内)


207 明日香  「昇、ありがとう、もう大丈夫だから」

208 昇    「まあ、お前の泣き顔は好きじゃないからな」

209 明日香  「え? なにそれ?」

210 昇    「お前は、笑ってる顔が、いいからな、
          だから、もう泣くな」」

211 明日香  「あ、ありがとう」

212 昇    「素直にお礼言われたら、こっちだって恥ずかしいだろうが」

213 明日香  「昇が、言い始めたんでしょ」

214 昇    「お前が泣くからだろうが!」


(棚を叩く昇。棚が傾き始める)


215 明日香  「え? えええええ!?」

216 昇    「明日香、危ない!」


(棚が2人に倒れてきた)


217 ミク   「ちょっと、あんたたち大丈夫!?」

218 明日香  「私は、平気」

219 昇    「俺は、平気じゃない。足をやられた」

220 明日香  「まさか、骨折れた?」

221 昇    「わからない」

222 ミク   「ちょっと待ってなさい、翔を呼んでくるから」

223 明日香  「ミクちゃん、見えないのに、どうやってお兄ちゃんを呼ぶの?」

224 昇    「まあ、一応神様だから大丈夫だろう」

225 明日香M  「改めて思ったけど、これって昇の顔が近すぎない?
          なんか、ドキドキする。こんな時どうすればいいんだろう?」
 
226 明日香  「ねえ…」

227 昇    「ん?」

228 明日香  「なんか、しゃべってよ」

229 昇    「はあ? 今、そんな状況じゃないだろ。
          お前をかばって、動けなくなってるのに、
          意味不明なコト言うな」

230 明日香M  「そうか、私をかばって、昇は動けない。
          私は昇の下に居る。昇は私を助けてくれた。
          いつの間にか、頼れる男になってたんだ。
          昇のにおいがする。髪だって触れるくらい近い。
          体温がわかる。吐息が顔にかかる。
          私の心臓の音が早くなるのがわかる。
          お願い。このドキドキが昇にバレませんように」

(倉庫前)


231 ミク   「さて、どうやって、翔に明日香と昇が倉庫の中で、
          棚の下敷きになってることを伝えるかが問題よね。
          私の祠に、ちょっとでもお供えとか、拝むとかしてれば、接点があって見えるんだけど、
          翔は、私たちを信じてないから、私の姿を見せることはできないし、
          触れることもできない。私は神様なのに、ホント役に立たない力しか持ってなくてやんなるわ。
          でも、私は、この島の神様なのは、変わらないのよ」

232 ミク   「契約の名の下に、森羅の神が命ずる。紅き踊り子たちよ、輝きの舞台で芽吹け!」

(店内)

233 雪    「あ? あれ? もしかして、桜か?」

234 翔    「桜って」

235 雪    「いや、外が桜吹雪になってるから」

236 翔    「今は夏だよ? 春でもないのに、桜が咲くなんてありえないよ」

237 雪    「じゃあ、外見てみろよ、外」

238 翔    「っ!? 本当に、桜の花びらが舞ってる…
          そんな、不思議なことが起こるなんて…」

239 雪    「ちょっと、見に行こうぜ」

240 翔    「そ、そうだね」


(倉庫前)


241 雪    「なんだこりゃ? どこから桜が降ってくるんだ?」

242 翔    「これは、桜の花びらで間違いなけど、なぜ今、こんな所で?」


(倉庫内)

243 昇    「翔兄の声が聞こえる」

244 明日香  「ホントだ。雪さんの声も聞こえた」

245 昇    「翔兄! 助けてくれー!」

246 明日香  「お兄ちゃん、助けてー!」


(店内)


247 明日香M  「お兄ちゃんと雪さんに助けられた私たちは無事に棚の下敷きから脱出できた。
          昇を病院に連れて行った。雪さんも付き添ってくれた。
          昇は足を捻挫したけど、全治1週間程度だと医者は言っていた。
          昇を家に帰して、お兄ちゃんは昇のお母さんに何度も謝った。
          そして、お店に戻って、今日は、お店を閉めて、私とお兄ちゃんと雪さんの
          3人だけになった。あと、小さな神様も肩に乗っていた」

248 翔    「すまないね、雪。お店閉めるの手伝ってもらって」

249 雪    「気にするな、友達なんだから」

250 翔    「ありがとう」

251 雪    「昇は、1週間で戻ってくるんだから、それほど大怪我じゃなくてよかったよな」

252 翔    「そうだね、昇が戻ってくるまでに、明日香ががんばってくれれば、問題ないけどね」

253 明日香  「任せてよ。昇の分までがんばるよ」

254 雪    「なあ、明日香って、彼氏いたっけ?」

255 明日香  「え? いないけど」

256 雪    「へ~、そうなんだ。昇って、かっこよくなったな。彼女とかいるのか?」

257 明日香  「え? いないんじゃない?」

258 雪    「じゃあ、狙いどきだな」

259 明日香  「いや、なんで?」

260 雪    「仲いいじゃん」

261 明日香  「どこが!? ただの幼馴染だよ」

262 雪    「まあ、人生に恋人は絶対に必要か、って言ったら、必要ないんだよ」

263 明日香  「え? なにそれ?」

264 雪    「だって、恋愛しないと死ぬ人間、見たことあるか?」

265 明日香  「ううん、そんな人、1人もいない」

266 雪    「だろ。でもな、あの体験はしたほうがいい。
          幸せな気持ちは、独りじゃできないんだよ。
          パートナーがいて、初めて成立するからだ」

267 明日香  「そうだね、私も幸せな体験はしてみたいと思うよ。
          でも、好きな人がいないんだよね」

268 雪    「そうか、明日香は、女になりきってないな」

269 明日香  「なりきってないって、なんで?」

270 雪    「女はな、男がいないと、本物の女になれないんだよ」

271 明日香  「本物か…そりゃ、なりたいけど。どうすればいいのか、わからないよ」

272 雪    「奥手じゃダメだ。積極的に行け。それから、好きになればいい。
          だって、途中でやめたっていいんだから」

273 明日香  「うん、そうだね」

274 雪    「なにごとも、チャレンジが大事だ。
          それで、あたいも、いい旦那さんに巡り会えたんだから。
          見舞いに行けよ、そうすれば昇も喜ぶぞ」

275 明日香  「う、うん、そうだね…」

276 明日香M 「昇は私を助けてくれた。私を守ってくれた。
          お見舞いに行くくらいはいいかもしれない。
          昇は、リンゴ好きだったから持って行こうかな。
          あれ? なんで、ドキドキするんだろ。
          なんか、昇に会えると思うと緊張する。
          あれ? 何でだろう、なんか、恥ずかしい」

(携帯電話が鳴る)


277 雪    「ん? ウチの旦那様から電話だ。(電話とる) ハイハイ」

278 ミク   「小娘、どうしたの、顔が赤いけど?」

279 明日香  「な、なんでもないよ」

280 ミク   「まあ、心が読めるから、あんたの思ってることはわかるんだけどね」

281 明日香  「…………」

282 ミク   「はあ、言い返せないほどってことね、ハイハイ」

283 雪    「ウチの旦那が、店閉まってるんだけど、どこに居るだって」

284 翔    「店に来たのかい?」

285 雪    「今、入り口に立ってる」

286 翔    「今すぐ開けるよ」


(店のドア開ける」)


287 雹    「よう、翔。久しぶり」

288 翔    「ああ、ホント、久しぶりだね、雹」

289 雹    「同じ島に住んでるのに、なんで会わなかったんだろうな?」

290 翔    「お互い、忙しいからじゃないから」

291 雹    「まあ、オレも、いろいろあったからな。あれ? もしかして、明日香か?」

292 明日香  「お久しぶり、雹さん」

293 雹    「へ~、ずいぶん、大きくなったな。色々と。今度、飯でも食いに行くか?」

294 明日香  「やった、雹さんの奢りだね」

295 雹    「当たり前だ、任せとけ」

296 雪    「おい、自分の奥さんの前で、ナンパするな」

297 雹    「バカやろう、ナンパじゃねーよ」

298 雪    「はあ~、やっぱり、男は、若い女のほうが、いいのか。
          散々、あたいを待たせておいて、な~んも、ないんだもんな~」

299 雹    「それは、しょうがないだろ。さっき、仕事が終わって、急いで駆けつけたんだぞ」

300 雪    「ホントか~」

301 雹    「ホントだよ~、なんで疑うんだよ」

302 翔    「まあまあ、夫婦ゲンカは、それぐらいにして、コーヒーでも、ゆっくり飲んでいきなよ」

303 雹    「すまない、そうしたいのは山々なんだが、これから行くところがあるんだ」

304 翔    「そうか、残念」

305 雹    「なーに、また来るよ。今度は、子供を連れてくるから、そんときに色々話そうぜ」

306 翔    「それまで、楽しみに待ってるよ」

307 雪    「それじゃあ、雹、行くよ」

308 雹    「はいはい、わかりましたよ、雪。みんな、それじゃーな」

309 翔    「またね」

310 明日香  「バイバーイ」

311 雪    「あ、そうだ、明日香」

312 明日香  「え? なに?」

313 雪    「明日香も、好きな人と結ばれなよ。
          頑張らないと、無駄に歳とるだけで終わるぞ。
          昇と仲良くしな~、じゃあね~」


(店を出る雪と雹)



314 明日香N 「店を出たら、雪さんは雹さんと腕を組んで、笑顔を浮かべながら、海へと向かって行った。
          いいな~、楽しそうで。なんか、理想の夫婦だな~。私も、あんな仲良し夫婦になりたいな~。
          けど相手がいないんだよね~。まあ、昇はありえないけど。
          なんで雪さんは、昇と私をくっつけようとさせるんだろ。
          あいつは、ただの幼馴染なだけなのに。
          まあ、いいや。今は、お兄ちゃんを守ることに集中しないと。
          恋愛は、それからだね」

(明日香の部屋、夜)  



315 明日香  「雪さんのお腹には、新しい命が宿ってるんだね」

316 ミク   「そうよ、また新しい命が誕生するのよ」

317 明日香  「命がなくなるコトばかり考えてた。
          でも、命って作れるんだね。
          神様の力なんかじゃない。
          私たちの力で生み出せるんだよね」

318 ミク   「わかってると思うけど、死ぬだけが終わりじゃなくて、
          ちゃんと命をつないでいく使命が人間にはあるの。
          この命のリレーを、あたしは見守ってたの」

319 明日香  「なんか、不思議だね~
          命が生まれるって、
          私にも、その力があるんだと思うと、なんか人間てすごいね~」

320 ミク   「そうそう、だから、小娘も早く昇と一緒になって、子供を産みなさい」

321 明日香  「な、なんで、そんなコトになるの。
          別に、昇のことなんか…」

322 ミク   「心が揺れてるってことは、脈ありね」

323 明日香  「ないない。そんなのない」

324 明日香M 「以前の昇は、生意気だとしか思ってなかった。
          けど、最近になって、知らなかった昇が近くにいる。
          仕事もできるし、ちょっとかっこよくなってるし、頼れる男になってる。
          けど、私は昇をどうしたいんだろ?
          一緒にいたいのだろうか? それとも、寂しさを埋めたいだけなのだろうか…
          でも、私を守ってくれた。それは、歪められない事実。
          そして、胸の鼓動が早くなるのは、どうしてなのか、それと…」

325 明日香  「ミクちゃん」

326 ミク   「なによ?」

327 明日香  「お兄ちゃんを助けられても、私たちが犠牲になるかもしれない。
          どちらも。助かると思ってたのに。
          甘い考えだったよ。誰も命を無くさないように、お兄ちゃんを守らないといけない」

328 ミク   「まあ、そうね。でも、どうやって、死ぬのかわからないのに、
          どうやって守るのか考えがえてるんでしょうね?」

329 明日香  「そ、それは~、えーと、えーと…
          ああーっ! 悩んでも仕方ない!
          明日、昇のお見舞いに行くから、そのとき考えるの。
          もう寝る、おやすみ~」

330 ミク   「あ~あ、せっかく、一緒に寝てあげてるのに、
          もう寝るって、面白くないわね~
          お風呂まで入ってあげたのに」

331 明日香  「お風呂は楽しかったよ~
          羽を触れて嬉しかったな~」

332 ミク   「あのね~、羽はデリケートなの。
          羽がなくなると飛べなくなるんだから」

333 明日香  「やっぱりそうなんだ。メモしよう~と」

334 ミク   「ちょっと、なによ、そのノート」

335 明日香  「え? ミクちゃんの弱点ノートだよ」

336 ミク   「なに、それ!? 早く捨てなさいよ」

337 明日香  「ヤダよ。これで、口の悪い神様に勝つんだもん」

338 ミク   「は~、なんか、考えがちっちゃいわね」



       ―2話終了―

3話目へ



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声音楽園3ねん8くみの担任である春トでございます。 楽しいクラスにしていきたいですね。
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